近年、ディーゼル車に対して「やめておけ」「買ってはいけない」といった声が増えています。しかし、日本では燃費の良さやトルクの強さ、高耐久性などディーゼルならではの魅力もあります。
本記事では最新の環境規制や維持費、実際の燃費データなどを踏まえて、ディーゼル車のメリット・デメリットを専門的に解説し、なぜ「買ってはいけない」と言われるのか、その真実を明らかにします。
目次
ディーゼル車はやめとけ?買ってはいけないと言われる理由
ディーゼル車はかつて燃費性能の高さと力強い走りで注目されました。しかし、最近では環境規制や維持コストの変化から「やめておけ」「買ってはいけない」といわれることがあります。
ここでは、なぜディーゼル車がそのように言われるのか、背景と実情を解説します。
なぜ「やめておけ」と言われるのか
一部のインターネット上や口コミでは、ディーゼル車に対して「故障が多い」「環境に悪い」といったネガティブな意見が目立ちます。とくに都心部での排ガス規制強化や脱炭素の流れから、将来的に扱いづらくなるのではないか、と不安視されることがあります。
実際、過去にはいわゆる「ディーゼル車走行禁止」報道などが話題になりましたが、それは古い規格の車両が対象です。現在の日本では乗用車に対する全面的な禁止はなく、最新モデルなら規制対象外となります。ただし、古い規格のディーゼル車には通行制限がかかる地域もあるため、そうした不安の声が出ています。
また、ディーゼル車特有の車両価格やメンテナンス費の高さ、騒音・振動への懸念も「買わない方がいい」といわれる理由です。
ディーゼル車への主な誤解と実態
「ディーゼル車=環境に悪い」というイメージも根強いですが、近年のクリーンディーゼル技術では排ガス浄化性能が大幅に向上しています。マツダなどの最新エンジンは、ガソリン車並みにクリーンな排出性能を達成しています。
また、ディーゼル特有の強いトルクは好評で、重い荷物を載せて坂道を走る用途では有利です。
しかし一方で、こうした高度な技術を搭載する分、車両価格はガソリン車よりも高めです。そのため、燃料代や税金の優遇によって高額な初期投資をどこまで埋められるかが購入判断のポイントになります。
ユーザー・専門家の意見
中古車価格や燃料費を調べると、ディーゼル車には経済メリットがあると指摘する声もあります。専門誌では「燃費と税制優遇を考えると、長距離利用ではコストメリットが大きい」と評価されています。
一方で、エンジンオイル交換が頻繁になる、DPF(粒子状物質除去フィルター)のトラブルリスクなどの指摘もあります。
実際のユーザーの声では、「高速道路をよく走るので燃費が助かる」「低速でじわじわ加速する感覚が慣れれば気持ちいい」一方で「アイドリング時の音や振動がやや気になる」という意見も聞かれます。最近のモデルではエンジン音が静かになっており、市街地でも快適に走れるものも増えています。
ディーゼル車のメリット・デメリット
ディーゼル車にはガソリン車に比べて優れた点もありますが、同時に注意点も存在します。
ここではディーゼル車ならではのメリットとデメリットを整理してお伝えします。
燃費とトルク:ディーゼル車の強み
ディーゼル車の最大のメリットは燃費の良さです。多くのミドルサイズSUVやセダンで、同排気量のガソリン車よりおよそ30~50%以上の燃費を実現します。実燃費でも高速走行や長距離ドライブではガソリン車を上回る場合が多く、燃料コストを抑えたいユーザーには大きな魅力です。
またディーゼルエンジンは低回転域から強いトルクを発生します。積載量が多い状況での加速や坂道でも粘り強く走るため、重い車両を引っ張るタフな走りが必要な場面で力を発揮します。
購入価格と維持費
一般にディーゼル車はガソリン車よりも車両価格が高い傾向があります。たとえば同クラスのSUVで比べると、ディーゼル車は数十万円高くなるケースがあります。これは高度なエンジンや排気浄化装置のコストが上乗せされるためです。
そのため、燃料代の節約と税制優遇で価格差をどこまで埋められるかがポイントになります。また、故障時の修理費用がガソリン車より高額になるケースもありますので、総合的なコストを計算する必要があります。
騒音・振動と乗り心地
ディーゼルエンジン特有の騒音や振動は近年かなり低減されていますが、完全には解消されません。実際には、遮音性の高い車種では街乗りでも静かなモデルが増えていますが、一般的に同クラスのガソリン車よりもエンジン音が大きく感じる傾向があります。
また、ディーゼルは燃焼音の性質から低速での振動を感じる場合があります。試乗時に騒音や振動を確認し、乗り心地の許容範囲かどうかチェックしておくと安心です。
排ガス浄化装置の注意点
最新のディーゼル車には、PM(粒子状物質)除去用のDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)やNOx削減用の尿素SCRシステムなどの浄化装置が搭載されています。これらは環境性能を確保するため不可欠ですが、維持管理に注意が必要です。
DPFは定期的に自動再生を行いますが、街乗り中心でアイドリングが多いとフィルターに煤が溜まりやすくなります。長時間高速走行が少ない使用環境では、ディーラーでの洗浄・交換費用が発生することがあります。尿素SCRを採用する車では、定期的に尿素水(AdBlue)を補充する手間も必要になります。
燃料費・維持費で見るディーゼル車の実態
燃料費や維持費は車選びで重要なポイントです。ディーゼル車は軽油を使うため燃料単価が安く燃費も良いのが特徴ですが、実際のコストは利用状況で変わります。
ここでは燃料代・整備費・税金の観点からディーゼル車の実情を検証します。
軽油とレギュラーガソリンの価格差
ディーゼル車が魅力に感じられる大きな理由の一つは、燃料である軽油の価格が安いことです。2024年頃の日本国内では、軽油はレギュラーガソリンに比べてリッターあたり約20円前後安いのが一般的です。そのため燃費差が小さい場合でも、長距離を走行すると軽油の安さが効いてきます。
ただし軽油価格は世界的な原油相場に左右されるため、一概に安い時代が続くとは限りません。燃費の良さを実感するには年間走行距離が多いほど有利で、短距離の街乗りばかりでは恩恵が薄くなる点に注意が必要です。
カタログ値と実燃費の違い
ディーゼル車のカタログ燃費は確かにガソリン車より良い数値が出ます。しかし実走行では条件によって差が縮まることもあります。高速道路で一定速度で走行する場合や荷物を積んで負荷が大きい場面ではディーゼル車が優位ですが、短距離・頻繁な停車の街中走行ではDPF再生の影響で燃費が落ちることがあります。
また同じ市販車でも計測モードによって燃費値が異なり、最近のWLTCモードでは小排気量ターボ車やハイブリッド車がディーゼルと同等以上の燃費を記録するケースも出ています。実際の燃費は日常の使い方で判断するのがおすすめです。
整備・修理費用の実態
ディーゼル車はエンジン自体の耐久性は高いですが、DPFやターボチャージャーといった特有の部品があります。DPFが詰まった場合やターボが故障した場合には、修理・交換費用が高額になる可能性があります。また、オイル交換の頻度がガソリン車より短いモデルもあります。
実際、自動車整備工場では「ディーゼル車は部品交換が高くつくことがある」と言われることが多いです。ディーゼル車を選ぶ際は、燃料代だけでなく長期的な整備費用も考慮することが大切です。
自動車税・保険料の違い
2024年現在の日本では、クリーンディーゼル車は環境対応車として税制上の優遇を受けています。取得税・環境性能割や重量税が免税・減税され、自動車税も次世代環境車の特例で75%程度減税される場合があります。ただしこれは現行の制度によるものであり、将来変更される可能性も考えておく必要があります。
一方で自動車保険の保険料は排気量や車両価格が主な要因で、ディーゼル車特有の割引があるわけではありません。大型のディーゼル車は車両価格が高いため保険料も高くなる傾向があります。これら税金・保険料の差も含めてトータルコストで比較しましょう。
環境規制と今後のディーゼル車動向
地球温暖化対策や大気汚染対策のため、世界中で排ガス規制が年々厳しくなっています。日本でも脱炭素社会の実現に向けて、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止が検討されています。以下では、海外と国内の規制動向を解説し、今後の見通しを示します。
世界的に強化される排出ガス規制
国際的には、CO₂やNOx・PM(粒子状物質)の排出規制が一段と厳しくなっています。欧州では2035年以降にガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する予定が決まっており、自動車メーカーは完全電動化に向けて動いています。同様に日本政府も「2050年カーボンニュートラル」の一環として2035年頃までに電動車への移行を目指しています。現時点では計画段階ですが、各国・各社が相次いで内燃機関車の開発リソースを削減しているのが実情です。
日本の規制動向
日本では2021年に政府が「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2035年頃までに新車販売を脱炭素車にする方針を示しました。これにより、ガソリン車・ディーゼル車も2035年頃から新車販売が事実上できなくなる見通しです(ただしハイブリッド車は含まれていません)。
ただし現行方針では中古車の使用は引き続き可能とされており、将来的にも既存ディーゼル車に乗り続けることはできます。新車購入を検討する際は、こうした政策動向も意識しておきましょう。
都市部でのディーゼル規制
国内では、東京都など一部の自治体で排ガス基準を満たさない古いディーゼル車の運行制限を行っています。例えば東京都は基準を満たさないトラックやバスの通行を禁止しており、大都市では大気環境保全の取り組みが進んでいます。
これに対して、最新のクリーンディーゼル車は基準をクリアしているため、現在のところ乗用車は通行制限の対象外です。ただし、将来的に規制基準がさらに厳格化される可能性もあるため最新の排ガス基準に適合しているかは確認しておくと安心です。
ポイント:世界的には2035年頃にガソリン/ディーゼル車の新車販売を禁止する動きが加速しています。メーカーは電動化を推進中で、今後も排ガス規制の強化が続く見込みです。日本でも政府がカーボンニュートラル戦略を掲げており、ディーゼル車は長期的に厳しい状況になりそうです。
ガソリン車・ハイブリッド車とディーゼル車の比較
燃費性能や使用感、コスト面で、ガソリン車・ハイブリッド車とディーゼル車には違いがあります。主要な項目ごとに比較してみましょう。
燃費と環境負荷の比較
以下の表では、ディーゼル車、ガソリン車、ハイブリッド車の一般的な特性を簡潔に比較しています。
項目 | ディーゼル車 | ガソリン車 | ハイブリッド車 |
---|---|---|---|
燃費(一般的な目安) | ガソリンより約20~50%良い | 標準的 | 最も良い |
燃料単価 | 軽油はガソリンより安い | 標準的 | 標準的(※レギュラー) |
CO₂排出量(Lあたり) | やや少ない | 多い | 最も少ない |
NOx・PM排出 | 高い(フィルターで低減) | 少ない | ほぼゼロ |
燃料費(例:5万km) | 安い場合が多い | 多め | 最も安い |
車両価格 | 高め(最新技術コスト) | 標準的 | 高め(EV関連含む) |
メンテナンス | DPFなど要注意 | シンプル | バッテリー管理必要 |
騒音・乗り心地 | ややエンジン音が大きい | 静か | 非常に静か |
表からわかるように、ディーゼル車は燃費や燃料費で優位な一方で、排ガス対策装置の管理や車両価格では不利な点があります。ハイブリッド車は燃費とCO₂排出の面で最も優れますが、バッテリーやモーターを含むシステムのコストを考慮する必要があります。
用途別のおすすめ車種
ディーゼル車は走行距離が多い場合にメリットが活きます。たとえば長距離ドライブや荷物を頻繁に積む用途では、燃費とトルクの強みが役立ちます。
一方で、街乗りや短距離利用が中心の場合はアイドリングが多くなりがちで、バッテリー回生で燃費効率の良いハイブリッド車や最新のガソリン車が向いています。税金優遇などのメリットも踏まえて、使用用途や予算に合った車種を選びましょう。
- 長距離ドライブが多い場合:燃費に優れたディーゼル車が有利
燃料代を節約できるため、距離を多く走る人には経済的です。 - 街乗り・短距離が中心の場合:ハイブリッド車や小型ガソリン車がおすすめ
頻繁な停車・発進に強い制御方式で、燃費効率を高めます。 - 税制優遇を活用したい場合:現状ではディーゼル車の税制優遇を受けられます
ただし、将来の税制変更の可能性も念頭に置きつつ選択しましょう。
まとめ
ディーゼル車に対しては「やめておけ」「買ってはいけない」という意見もありますが、実際の選択は利用方法や今後の見通しによるところが大きいです。燃費の良さや力強いトルク、税制優遇は大きな魅力ですが、排気浄化装置のメンテナンスや騒音などのデメリットも無視できません。2035年以降の規制や電動化の流れを考慮すると、長期的な視点で対抗できるかどうかを検討する必要があります。
最新のディーゼル車は環境性能も改善されていますが、ガソリン車・ハイブリッド車とは一長一短があります。購入を検討する際はこれらを踏まえ、自分の走行パターンや使用期間、維持費を総合的に判断することが重要です。
結論として、ネットで「ディーゼル車は買ってはいけない」と言われていても、用途次第で選択肢になることはあります。長距離ビジネスやアウトドアで経済性と走破力を重視するならディーゼル車、街乗り中心であればハイブリッド車や最新の小型ガソリン車、さらに将来性を見越してEVへの移行を検討するのもひとつの手です。情報に踊らされず、メリットとデメリットを理解したうえで最適な車種を選びましょう。