自動車保険は通常1年契約で毎年更新するのが一般的です。
しかし近年、一度の契約で3年間継続できる長期契約プランも登場しています。
一見すると更新の手間が省けて便利に思えますが、実は注意すべきデメリットも存在します。
本記事では、自動車保険の三年契約に潜むデメリットについて、2025年時点の最新情報を交えてわかりやすく解説します。
自動車保険の三年契約、そのデメリットとは?
自動車保険の3年契約は、1年契約を3年分まとめて結ぶ長期プランのことです。
まずはその仕組みと、通常の1年契約との違いを押さえておきましょう。
自動車保険の3年契約とは
通常の任意自動車保険では契約期間は1年間ですが、これを最長3年間までまとめて契約できる商品が一部の保険会社で提供されてきました。
例えば大手損保の三井住友海上や東京海上日動では2010年代から3年契約型のプランを扱っており、契約から3年間は途中で更新手続きをすることなく補償が継続します。
この長期契約プランは主に代理店型の保険会社で提供され、インターネット系のダイレクト損保では取り扱いがないのが特徴です。
3年間の契約期間中は契約時に定めた補償内容と保険料が基本的にそのまま維持されます。
1年契約との違い
まず、無事故による等級アップや、事故による等級ダウンの反映タイミングが異なります。
1年契約の場合、契約期間中の事故有無によって翌年の等級が変動し、それに応じて保険料も増減します。
これに対し、3年契約では契約期間中は等級は据え置かれ、3年間無事故で過ごした場合は次の更新時に一度に3等級進み、逆に途中で事故を起こした場合も契約満期までは等級が下がりません(満期後に事故の影響が反映されます)。
次に、保険料の改定や割引適用のタイミングにも違いがあります。
1年契約では保険会社の料率改定があれば毎年保険料に影響しますが、3年契約中は契約時の保険料が原則変更されません。
例えば契約期間中にゴールド免許を取得したり、走行距離が短くなった場合、1年契約なら次回更新時から割引が適用されますが、3年契約では満期になるまでそうした条件変更が保険料に反映されない点も異なります。
自動車保険3年契約のメリット(利点)
3年契約にはどのような利点があるのでしょうか。
ここでは、自動車保険を3年契約にすることで得られる主なメリットを見ていきます。
保険料が3年間固定され将来の値上げリスクを回避
3年契約最大のメリットは契約期間中の保険料が原則変わらないことです。
1年契約では毎年の更新時に事故歴や保険料率改定の影響で保険料が上下しますが、3年契約なら契約開始から3年間は保険料が据え置かれ、将来的に保険料が値上がりする局面でも影響を受けずに済みます。
近年は事故率の増加や部品価格の高騰により各社が保険料を引き上げる動きも見られますが、そうしたタイミングで長期契約を選んでおけば、契約中の値上げリスクを回避できるのです。
また、3年間の支出額が確定するため家計の見通しが立てやすく、将来の計画を立てる上でも安心感があります。
契約期間中は事故による保険料アップがない
もう一つのメリットは、契約期間中に事故で保険を使ってもすぐには保険料が上がらない点です。
通常の1年契約では事故を起こして保険金を請求すると翌年の等級が下がり保険料が上昇しますが、3年契約中はたとえ1年目に事故を起こしても残りの期間は契約時と同じ等級・保険料が維持されます。
例えば10等級で3年契約を開始し1年目に事故を起こした場合でも、その後の2年間は等級ダウンによる保険料アップはありません(満期後の更新時に初めて影響が反映されます)。
このため、契約期間内は安心して補償を受けられるという利点があります。
一括払いで保険料が割引になる場合がある
保険会社によっては、3年契約の保険料を一括前払いすると1年あたりの保険料が割安になるケースがあります。
3年分をまとめて払うため初期負担は大きくなりますが、トータルでは支出を抑えられる可能性があるでしょう。
また、毎年契約を乗り換える手間をかけなくても長期割引が適用される分、お得に感じられる場合もあります。
更新手続きの手間が省ける
1年契約では毎年更新手続きが必要ですが、3年契約ならその手間を3年間省くことができます。
保険の更新忘れの心配も減り、忙しい方でも安心です。
毎年代理店やネットで見積もり・契約をし直す手間がないため、長期契約は手続きの簡便さというメリットもあります。
自動車保険3年契約のデメリット(注意点)
一方で、3年契約にはいくつか押さえておきたいデメリット(注意点)も存在します。
ここでは、代表的なデメリットを順に見ていきましょう。
保険料が割高になる可能性
長期契約型の自動車保険は、1年契約に比べて保険料が割高になる傾向があります。
実際、3年契約を扱うのは代理店型の大手損保会社が中心で、インターネット割引などで保険料を抑えやすいダイレクト損保の多くは3年契約を提供していません。
そのため、長期契約を選ぶと必然的に割安なダイレクト型保険への加入機会を逃すことになり、結果的に支払う保険料が高くなりがちです。
さらに、契約時から3年間は他社に乗り換えず同じ条件で継続する前提のため、保険会社側も将来のリスクを見越した保険料設定を行うことがあり、安心料込みで割高に設定されているケースもあります。
新規割引やゴールド割引を受けられない
自動車保険にはインターネット割引や無事故割引、新規契約割引など、契約初年度に適用されるさまざまな割引制度があります。
1年契約であれば毎年乗り換えるたびに各社の初回割引を受けるチャンスがありますが、3年契約では一度契約したら途中でそうした新規割引を活用することはできません。
また、ゴールド免許割引や低走行距離割引など、契約更新時に条件を満たせば適用される割引も、長期契約中は途中で反映させることができず、割引の機会を逃す場合があります。
例えば契約後にブルー免許からゴールド免許へ切り替わったとしても、次の更新まで保険料はゴールド免許扱いにはならず、その間は本来受けられるはずの割引を受け損ねてしまいます。
事故後に満期で保険料が大幅アップするリスク
3年間の契約期間中は先述のように事故を起こしても保険料は据え置かれますが、その反動が契約満了時に一度に表れます。
例えば契約開始時に10等級だった人が契約期間中に保険事故を起こした場合、本来なら翌年7等級まで下がっていたところ、3年間は10等級のまま据え置かれ、満期更新時に次の契約で一気に等級ダウン(9等級程度)となります。
この結果、満期後に大幅な保険料アップとなり、契約者にとっては大きな負担増となります。
1年契約であれば早期に等級ダウンが反映され徐々に等級を回復させていけますが、3年契約だと契約後しばらく実質的なペナルティがない代わりに、終了時にまとめて影響が現れる形です。
そのため、3年契約中に事故を経験すると、満期を待たずに途中解約して他社に切り替えようと考える人も少なくありません。
途中解約や他社への乗り換えが難しい
3年契約を途中でやめて別の保険会社に乗り換えることは可能ですが、ハードルが高いのもデメリットです。
まず、現在の契約を途中解約するには残期間の保険料の精算が必要になります。
一括払いしていた場合は未経過分の保険料が返金されますが、その際は日割りではなく「短期率」という計算係数が使われるため、期待したほど多くは戻ってきません。
例えば保険料を年払いで契約して半年で解約した場合、本来半額が戻ると思われがちですが、短期率70%が適用されるため実際の返戻金は30%程度にとどまります。
また、新しい保険に乗り換える際も注意が必要です。
長期契約から途中で切り替えを受け付けてくれる保険会社は限られており、特にダイレクト型の自動車保険会社では積極的に対応していない場合があります。
そのため、乗り換え先を探すのに苦労したり、代理店経由で個別に相談しなければならないケースもあります。
さらに、満期を待たずに解約してしまうと等級の進行も遅れてしまいます。
途中で別の保険に切り替えた場合、新しい契約で1年間経過しないと等級が上がらないため、結果として次に等級アップするまでの期間が長くなってしまうのです。
このように、途中解約して他社に移るには慎重な検討と計算が必要で、場合によっては満期まで待った方が得策なこともあります。
2025年現在の自動車保険3年契約の現状と今後
2025年時点では、自動車保険の3年契約を取り巻く状況が大きく変化しています。
長期契約の新規受付を終了する保険会社も相次いでおり、今後は3年契約が徐々に姿を消す見込みです。
ここでは最新の現状と、契約者への影響や今後の動向について確認しましょう。
主要保険会社の長期契約新規受付停止
保険会社側が長期契約の提供を中止する背景には、近年の事故率や自然災害による損害率の変動が大きくなり長期の保険料設定が難しくなったこと、制度や料率の改定に長期契約だと柔軟に対応できないこと、そして契約者ごとのリスク変化(運転環境や状況の変化)に契約途中では対処しづらいことなどが挙げられます。
2024年後半から2025年前半にかけて、主要な損害保険各社で以下のような動きが見られています。
- 2024年末〜2025年初頭にかけて、ある大手損保では新規の3年契約受付を終了(既存契約の更新は当面継続)。
- 別の損保では、一部代理店での長期契約の新規受付を停止。
- また別の社では、特定の保険商品を除き長期契約の新規取り扱いを縮小。
- さらに、長期契約商品を段階的に廃止する方針を打ち出した社もある。
3年契約満了時の注意点
現在3年契約を利用中の方は、契約期間中は従来どおり補償が継続されますが、満期を迎えた後の扱いに注意が必要です。
多くの場合、満期後は自動的に1年契約へ移行するか、新たに1年契約で再契約する形になります。
その際、以下の点を事前に確認しておくことが重要です。
- 満期日以降の保険料が上がる可能性がある
- 適用される割引率や特約の内容が変更される場合がある
- 長期契約時に適用されていた割引がなくなる
特に、長期契約専用の割引が消滅することで、更新後の保険料が想像以上に高くなるケースも考えられます。
3年契約が満期を迎える前に、保険会社から送付される案内や見積もりをよく確認し、必要に応じて補償内容の見直しや他社の見積もり比較を検討すると良いでしょう。
今後は毎年見直す時代へ
3年契約の新規受付が減っている背景には、保険会社側の事情だけでなく、契約者側にも自動車保険を定期的に見直すニーズが高まっていることがあります。
今後は、毎年自分の事故歴や等級の変化に応じて保険会社や補償内容を見直し、その時々で最適な保険を選ぶことが当たり前の時代へと移行していくと考えられています。
実際、ネット型(ダイレクト型)の保険の普及で複数社の見積もり比較や契約の手続きが容易になっており、状況に応じて柔軟に乗り換えることも以前より格段にしやすくなっています。
長期契約による「手間をかけず安定を図る」発想から、むしろ自分に合った保障を「毎年主体的に選ぶ」方向へ、時代がシフトしつつあると言えるでしょう。
まとめ
自動車保険の3年契約には、更新の手間が省け保険料が契約期間中は安定するなどのメリットがある一方で、保険料が割高になりやすいことや途中での割引機会を逃す、解約や乗り換えが難しいといったデメリットも存在します。
近年の社会環境や保険業界の動向もあり、3年契約は多くの保険会社で新規募集が終了しつつあり、今後は1年ごとに保険を見直すスタイルが主流となる見込みです。
長期契約の安定性を魅力に感じていた方も、改めてメリット・デメリットを比較考量し、自身にとって最適な契約期間を選ぶことが大切です。
常に最新の情報を収集しながら、納得のいく形で自動車保険を活用していきましょう。